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危険な違反建築物件はご存知ですか?不動産取引のかくれたリスク

投稿日:2019年2月12日 更新日:

違反建築物、一戸建て、マンション

違反建築物、一戸建て、マンション

多くの不動産取引をおこなっていると、まれにちょっと危ない物件に出くわすことがあります。皆さんは違反建築物をご存知でしょうか。

違反建築物とは、建物を建築する際に建築基準法や各自治体の条例等の規定に違反して建築された建物や、増改築することによって違反な状態になってしまった建築物のことを指します。
なお、違反建築物に対しては、建築基準法第9条第1項において

「特定行政庁は、この法律若しくはこれに基づく命令若しくは条例の規定又はこの法律の規定に基づく許可に付した条件に違反した建築物又は建築物の敷地については、当該建築物の建築主、当該建築物に関する工事の請負人(請負工事の下請人を含む。)若しくは現場管理者又は当該建築物若しくは建築物の敷地の所有者、管理者若しくは占有者に対して、当該工事の施工の停止を命じ、又は、相当の猶予期限を付けて、当該建築物の除却、移転、改築、増築、修繕、模様替、使用禁止、使用制限その他これらの規定又は条件に対する違反を是正するために必要な措置をとることを命ずることができる。」

と規定されています。

原則、建物を建築する場合、「建築確認申請」を行い、役所の許可を受け「確認済証」を取得した上で建築がスタートし、建物が完成した後のちに完了検査を受け、「検査済証」を取得する必要があります。
よくある違反建築物のパターンとして、建築確認申請で許可を受けたものと違った建築物が建てられている事があります。例えば申請された面積より実際には大きく建てられていたり、住宅として申請されていたものの一部の部屋が店舗や事務所など用途が変わって建てられていたりなどいろいろなケースがあります。
当然、そういった建築物は完了検査で合格を受けることはできませんので、完了検査自体実施していないことがほとんどです。

意外と多い完了検査未実施物件

国土交通省の確認によると平成10年度の完了検査の実施率は38%、平成13年度では64%と言われています。

最近は国や自治体が違反建築物に対して厳しいチェックをおこなっているため、新築物件で違反建築物を見ることはあまりありませんが、平成築の建物でも違反建築物は意外と多く存在しているという実態があるのです。また、こういった違反建築物は金融機関の融資が受けられない事が多く、いざ売却しようとしても売りづらい物件になってしまいます。

違法建築物とは違う既存不適格物件

既存不適格物件

「既存不適格物件」とは、新築当時は、建築基準法やその他の規定に適合して建築されていたものの、その後の法改正などにより現在の規定に適合しなくなってしまった建築物のことをいいます。
例えば、都市計画の変更により建ぺい率や容積率の制限が厳しくなり、現行の規定を超過してしまった物件や、道路の拡幅により敷地の一部が収用され面積が減少することにより、現行の規定を超過してしまった場合などのほか、法改正前の旧耐震建築物も既存不適格に該当します。

違反建築物と違い建築時は適法に建築されているため、除却や使用禁止などの是正命令を受ける心配はありませんが、再建築する際には現在の規定に適合する必要があり、現在建築されている建物と同規模の建築物は建築できなくなる可能性があるので注意が必要です。

違反建築物や既存不適格物件を見極めるには

実際には違反建築物や既存不適格物件を一般の方が、見極めるというのは非常にむずかしいと思います。

そこで重要になってくるのが、購入売却を手助けする不動産仲介業者の存在です。
不動産業者として違反建築物や既存不適格物件の売買を仲介する場合は、その事実を重要事項説明書で説明する義務があります。不動産業者は事前に物件調査をおこなうことによって、違反建築物や既存不適格物件であるかを確認します。
但し、物件調査や重要事項説明をおこなう宅地建物取引士の調査能力が低いと見落とされてしまう可能性があるので、注意が必要です。

問われる不動産業者の知識と物件調査能力

違反建築物 小屋裏

違反建築物といってもさまざまなケースがありますが、不動産業者の知識不足を感じた事例を紹介します。

それはある不動産業者が担当する中古一戸建てをご案内した際の話です。

その物件は比較的新しい平成築の2階建物件として販売されており、図面では4LDKで2階の上に広めの小屋裏収納が付いている事が売り文句の物件でした。私は、この物件に興味をしめされたお客様と現地を内覧した際に、売りの文句の小屋裏収納に問題があることに気づきました。
実は小屋裏収納というものは、

基本的に高さが1.4m以下で、小屋裏収納下階の面積の2分の1未満にすることによって、建築確認の申請時に延床面積と階数に算入しなくて良いことになっています。

しかしこの物件は大人の私が無理なく立ち上がれる高さがあり、あきらかに1.4m以上の高さがあるのです。
また、小屋裏収納の面積を算入するとあきらかに規定の容積率を超過する状況でした。お客様は高さのある小屋裏収納の開放感に魅力を感じたようですが、違反建築物である可能性を説明したところ購入は控えたいという事でした。
その後内覧の結果を担当する不動産業者に伝えた際に違反建築物の可能性を指摘したところ、担当者は違反建築物である可能性を全く認識していないようでした。全国的に名前が通った会社の社員にもかかわらずです。

怖いのは、このように違反建築物である事実を認識できない不動産業者に対応されたお客様は、違反建築物である事実を知らされないまま購入してしまう可能性があるということです。

また、違反建築物は金融機関の融資が受けられないと説明しましたが、このケースでは、融資は受けられてしまう可能性は高いと思います。なぜなら金融機関はローンの審査で建物内を確認する事はまずありませんので、金融機関が違反建築物という事実を把握することは難しいと思います。

不幸にも仲介に入る不動産業者の知識や物件調査能力が低いと、違反建築物という事実を認識しないまま、契約して住宅ローンの審査も通り、とんとん拍子で購入してしまうことになりかねないのです。ちょっと考えるだけでもゾッとしますね。

違反建築物という事実を知らないまま購入したとして、もし後日、購入者がその事実を知った場合、トラブルになる可能性は高いと思われます。金融機関が把握したら住宅ローンの一括返済を求められるかもしれません。
当然、仲介に入った不動産業者は説明責任を問われるでしょう。
しかし、実際に不動産の売買でトラブルが発生すると、簡単に解決することは難しく時間がかかることも少なくありません。購入する側としてはそんなトラブルには巻き込まれたくはありません。
不動産業者が専門性の高い知識や調査能力があれば良いのですが、建築については詳しく無い不動産業者も多いのが実態だと思います。できる限り信頼できる不動産業者を選びたいところですが、もし購入を検討する物件が心配なのであれば、(お金はかかりますが)建物に関して専門性の高い建築士にインスペクション(建物状況調査)を依頼することを検討してみてください。
弊社でもご相談が増えてきています。

ここまで違反建築物について説明しましたが、違反建築物だからといって、購入してはいけないということではありません。不動産好きのお客様の中にはあえて違反建築物を購入し、建物が使える間は人に貸して賃料収入を得るという方もいらっしゃいます。(あくまで特殊なケースですが)
違反建築物だとしてもそのリスクを十分理解した上で、価格などの面で魅力的な物件であると感じるようであれば、慎重に購入を検討みてもいいかもしれません。

 

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